ぼりログ

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料亭をクビになる覚悟で訴えた休み希望。社長案件にまで拡大した末に言われた「ありがとう」

こんにちは、板前のぼりです!

 

つい先日、こんな記事を書きました。

 

boriesy.hatenablog.com

 

この記事で言いたかった事をまとめると「自分の価値観を押し付けないで、受け入れよう」というような話でした。

 

そして自分でもびっくりしたのですが、この記事に書いたような事が早速自分の身に起こりました。

 

今回の言及記事は実際の体験として書き起こします。

 台湾から来日した最愛の後輩、王(ワン)君との別れ

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(注)ぼりは写真右です。赤坂見附「赤札屋」にて2人で送別会をした写真。

 

状況説明を兼ねて話を進めていきたいと思います。

 

王君が日本に来日したのはちょうど1年前。

 

台湾の国立大学を卒業後(めちゃくちゃ頭がいいらしい)、和食の勉強をしたいという事で就労VISAを取得し日本にやってきました。

 

彼は僕の勤務先にも全て自力でアポを取り、面接に来て合格。

 

ドラマとラジオのみで日本語を勉強してきたというツワモノな彼は、当初は挨拶もままならなかったのに、1年たった今では日本人の必殺技である「謙遜」さえ笑いを交えて使いこなせる程上達しました。

 

また料理に関してもとにかく勉強熱心で、自分で和食の店を探しては食べ歩き、去年の暮れには独り金沢にまで遠征していた程です。

 

彼の上達は目を見張る程で、見習い修行のメインである「まかない」のチャンスを使い

「牛丼」「親子丼」「みそ汁」から「手打ち蕎麦」まであらゆる事に挑戦しては自分のものにしていきました。

 

僕は、彼が「後輩」であり「年下」である事など一切関係なくその成長し続ける姿勢を心より尊敬しています。

 

彼の就労VISAの期限は1年とされていたのですが、ちゃんと下調べをしていたようで彼の計算では3年は滞在できる予定で修行していました。

 

ところが現実は厳しいらしく、経理担当の方から「王君の1年以上の滞在は難しい。君から伝えてくれれば彼もちゃんと受け止めてくれると思うから君から王君に説明してくれないか」というようなことを言われました。

 

僕自身どうしても彼の望まぬ帰国を阻止したかったので、「VISAってなぁに?」の理解レベルではあったのですが、できる限り調べ彼の更新がなぜ難しいのか、直接の彼宛の説明文書にも目を通しました。

結果としてわかったことは、彼の在留期間更新は前例が無い程難しいものだったということ。

 

自分なりに事実を受け止め、彼にその事実を説明した時の表情は忘れられません。

 

そして自分の無力さが本当にくやしかった。

 

僕は「変えられない現状に絶望するのではなく、最大限に選べる中から未来を選ぶ事が大切だと思うから」と言って彼のこれからについて一緒に考える事しかできませんでした。

 

そんな彼の帰国は来週にまで迫ってきました。

 

即決で却下された休み希望

彼の帰国の日が平日の為、会社内の人間からお見送りをする人がいないという事を知った僕は迷わず名乗りをあげました。

 

その日にお休みする予定だった調理場の仲間に、「王くんのお見送りにいきたいから出勤を交代してほしい」と伝えたところ、ちゃんと事情を理解してくれたので2つ返事でOKをもらう事ができた。

 

いざ料理長にその旨を伝えて休日交代の申請を出そうとしたところ即刻却下されてしまいました。

 

その理由は、彼が帰国するその日は翌月の自店の会席料理の献立を実際に試食して考案する大事な「試食会」と呼ばれる社内行事の日だったからです。

 

その「試食会」が会社内で大事な意味を持つ事は十分に承知していたつもりでしたが、あくまで出勤を交代するだけで、自分の代務は存在する事も伝えたのですがそれでも料理長の意見は変わりませんでした。

 

「修行の身であり、プロとしての自覚があればそんな事を口にできるはずがない」

「仕事が第一なんだから脇目をくれるな」

 

といったような言葉を浴びせられました。

 

料理長が社長や他店舗のお偉いさんに、自分の考案して味付けを考えた料理を提供する為に多大な労力を使っている事は日頃承知していたので、そこまでは我慢できたのですが次の一言で僕の我慢は限界を越えることになります。

 

「送別会もするんだったらわざわざ見送りなんてする必要なんかないだろう。お前の言っている事は常識としておかしいぞ!」

 

この言葉に僕は、トップの立場にある料理長に対して異論を唱えました。

 

「自分が大切に思うことをないがしろにしないとプロになれないのならプロになれなくても構いません。

会社での僕の役割を果たす代役は「誰か」でもできるかもしれないけれど、「僕という人間」の代わりは誰にもできません。

僕の価値観の中で、僕にとって大事なのは人との関わりなので仕事を第一に考えるなんて事はこの先もありません。

もしこの考え方が会社の方針にそぐわないというのであれば今すぐ僕をクビにしてください。

僕は社員の大切なものを認めてあげられない会社で働き続ける気はありません。料理長という立場にはその権限は与えられているので可能なはずです。」

 

僕は最大限に感情を抑えて言ったつもりですが正直どうだったかは覚えていません。

 

この言葉に料理長は「俺の判断じゃお前は言うこと聞かないだろうから同じ事を社長にも言ってみろ」とのこと。

俺に言った事と同じ事、社長にも言えるんだろ?の口調でした。

 

僕はその場で了解した上で社長からの許可さえいただければ休み希望を受理して頂く約束をしてもらいます。

 

ただしこの時点で僕は「この申請が通らなければ会社をやめる」という意思は固まっていました。

 

会社をやめる覚悟で挑んだ社長への申請

社長はこの騒動を知るわけもないので、しっかりと説明する内容を整え電話にて報告。

 

王君が日本を離れる事、僕が教育係を担当していた経緯、会社にとって重要な「試食会」を欠席してでも彼の出発に立ち会いたいという気持ち。

 

事情を聞いた上で社長から来た返事は「彼を空港まで見送ってくれるんだ。荷物が多いようなら社用車(社長の移動用の車)を使って直接空港まで送り届けてあげてください。わざわざありがとう」の想定外の感謝の言葉。

 

会社を去ることになっても押し通すつもりでいた僕は拍子抜けしてしまい、その時にはじめて足が震えている事に気づきました。

 

正直、めっちゃ怖かった。

 

もう、社長の自宅方向に足を向けて寝る事なんて出来ません。笑

 

社長からの直々の了解を得た僕は料理長にその旨を伝え、反論が返ってくる前に「当日はご迷惑をおかけしますがお休みをいただきます」の言葉を添えてその場を離れました。

 

その後、料理長は実際に社長に確認したようで、しぶしぶ納得したようです。

 

まとめ

今回僕が起こした騒動から伝えたいのは「僕の考え方は間違っていなかった」という事ではありません。

 

もし社長がNOの返事をしていれば僕は今頃本当に仕事を辞めていたでしょう。今回僕の申請を受け入れてもらえたのはたまたまです。

 

何が正解だったかなんて決められないし、そもそも正解なんてありません。 

ただ、人それぞれ「大事に思う事」は違います。

 

誰かから見たらしょうもない事が本人にとっては特別な事ってみんなあると思うのです。それが価値観ですから。

 

ぼく自身、普段はシフト管理を行っている立場なのですが、例えばアイドル好きな後輩がコンサートに行きたいと言ったときも休みを許可しています。

 

冒頭に書いた通り「自分の価値観を人に押し付けないで受け入れてあげる事」、これが大事だと考えているからです。

 

ぼくにとってはアイドルのコンサートは正直魅力的でもなんでもありませんし、それを熱く語られたところでぼくはコンサートに行くことはないです。

 

でも彼にとってはとても大イベントで、今後のモチベーションにも関わってくるのでしょう。普段は黙々と仕事をする後輩がちゃんと申し出てくれたことを断る理由はぼくにはありません。

 

ただ、料理長の口癖は「俺は第一子が生まれた時も2ヶ月間、顔も見に行かずに仕事に打ち込んだ」です。

 

現に板前の社会というのは「親の死に目にも会えない気持ちで」とか平気で言うような世界観なので、仕事以外には脇目も振らないそのストイックな姿勢が現在の料理長という立場と実力を作り上げたのだと思います。

 

僕には全く理解できない価値観ですが、「そういう人もいるんだな」と受け入れる事はできます。

 

ですが料理長にはその「受け入れる」姿勢が全くなかった。これが僕の中でどうしても許せませんでした。

 

そこまで頑固なんだからきっとこの先も僕の事を理解してくださる事はないのだと思います。

 

それでも僕はこれからも板前修行を続ける為に出勤し続けます。

 

ただし価値観を否定され、自分が大切だと思う事を守らせてもらえないのであればいつでも会社を去るという姿勢は崩しません。

 

自分が大切だと思うことを大事にできない人間に、多くの人間を喜ばせる愛のある料理を作る事はできない。僕はそう思っています。

 

さっさと実力をつけ、1人前の料理人として人生を懸け、これから先も自分に嘘をついていないと思える判断の中で精一杯自分を表現して生きていきたい。

 

なんて壮大な事を考えてしまった1日でした。

 

長々と書きましたが、読んで頂いてありがとうございます!

以上、ぼりでした!